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・ショックではあったがすぐ受け止めた」が五二% ・「ある程度予測していたのでショックは少なかった」が二四% ・ショックで目の前が暗くなった」が一六% また各地のがんセンターや一般病院の患者への調査でも、がん告知を望む患者が圧倒的に多くなっている(『癌治療学会誌』三一巻三号、一七一〜一八五頁、一九九六年)。
ただ現状では、告知について医師にとっていちばん問題になるのが、家族の反対である。
家族に相談して反対意見にでくわすと、たいていは本人に告知できなくなる。
しかも家族はほとんどの場合に複数だから、一人でも反対意見があると、ほかの家族は告知の結果について責任をとらされることを恐れて、その一人の反対意見を押し切ることはきわめて困難になる。
だから告知を推進している多くの医師は、家族抜きで本人に告知する、あるいは家族への事前相談なしに本人と家族に告知するという、見方によってはいささか「乱暴な」(あとで家族から批判されるのを覚悟のうえの)やり方をとっている。
家族の反対あるいは意見の不一致も、がん告知に際して医師に心理的負担をおわせることになり、日本で告知がなかなか進まない大きな要因だ。
家族もともに、その負担をになう勇気を持ってほしい。
時期がくればいずれは真実に直面せざるを得なくなり、いちばんつらい思いをするのは本人なのだから。
いまや時代の要請は、医療従事者の側からがん告知を推進すべきと告げているようだ。
医療従事者にとってもがん告知は、心情的にまことにつらい。
しかし私も二上二年前から原則としてがんの患者さんには真実を告げるようにしていたが、ほとんどの場合、きわめて理性的に受け止めてくださり、こちらのほうが人生の処し方を教えられることが多い。
男っぽい渋さで人気のあった俳優のTさんが、一九九六年五月に眸臓がんで亡くなられたが、このTさんの療養中の告知に至る様子はこんなふうだったという(『週刊朝日』一九九五年一二月一日号)。
Tさんの場合、医師が積極的に告知をすすめた。
がん告知について、それまでのTさん夫婦の話し合いでは、Tさんは「女房はしてほしいという。
僕は絶対してほしくなかった。
自分ががんと知った瞬間から生きていく力をなくすと思ったからです」と、つねづね奥さんに話していたそうだ。
しかし主治医が奥さんに「Tさんはしっかりした方です。
告知しましょう」と強く勧めた。
夫との約束を守らねばならない妻の立場との板ばさみで、奥さんは悩んだ。
何度も話し合った結果、結局告知することになった。
Tさんは生きる力をなくしただろうか。
「それがそうじゃなかった」とTさんはいう。
かえってしっかりと生きてゆく力がわいてきたという。
ちなみに奥さんの意見はこうだ。
「自分の命は知っておくべきです。
寿命があと二〇年と思っているのと、二ヵ月とでは生き方が違いますから」と。
この連載記事は「夫婦の階段」というシリーズだった。
がん患者における、告知と家族の関係について、あらためて考えさせられる。
さてターミナルケアというからには、「ホスピス」についてもここで触れておきたい。
「ホスピス運動」の理念は、「死の積極的受容と意義づけ」であり、病院との違いは、不治の病に冒された終末期患者に対して、十分な対話と苦痛除去の処置のみおこない、たとえ延命効果があったとしても、本人が望まない限りは「治療」をしないということにあろう。
イギリスに生まれた近代「ホスピス」は、「ホスピス運動」として、病院での終末期患者の医療に非人間的な印象を持っていた多くの人びとにアピールし、世界的に大きなインパクトを与えた。
そして「ホスピスケア」は、世界各国で試みられるようになった。
イギリスでのホスピス運動は、教会中心の地域運動を核にした、病院での死に対するアンチテーゼとして提起された。
そして日本やアメリカよりもはるかに整備された、医師、訪問看護婦、ホームヘルパー、ボランティアなどによる、地域ケアシステムを基盤としている。
ボランティアもふくめた、この「地域性」というのが、イギリスのホスピス運動の大切なところである。
それに比べて、日本では「ホスピス」という概念が、ターミナルケア専用の施設とか、あるいはがん患者の苦痛コントロールの、ハウツウ的なものと考えられすぎているのではないだろうか。
北欧では「ホスピス」は不要 ところでこれはじつに興味深いことだが、すぐれた社会保障制度で有名な北欧諸国では、「ホスピス」がほとんど普及していない。
私はデンマークに赴いた際に実地に確かめたが、デンマークにも「ホスピス」は存在しない。
この国ではターミナルケアの問題に「ホスピス」の出番がなく、「その必要性についての議論さえほとんどなかった」という。
一九八〇年に開催された「第一回世界ホスピス会議」においても、スウェーデン代表は「ホスピスというものを別個に確立するのではなく、現在の医療の中に、ホスピスの理念を取り入れる方向を目指したい」という見解を表明している(Z氏他著、岡村監訳『ホスピスケア−ハンドブック』)。
これらの国の地方自治体、さらには地域社会をベースにした高度な社会福祉サービスをもってすれば、ホスピスという特別の考え方を必要としないのだ。
医療と福祉の双方を包みこむより大きな論理−福祉原理というべきだろうIが貫徹しているからだ。
これはターミナルケアを考えるうえで、たいへん示唆的ではないだろうか。
つまり「医療」と「福祉」の双方が連係して、地域社会の生活のあらゆる局面で高い水準が達成されれば、少なくとも「ホスピス」という特殊な専用施設はその必要性がなくなるのである。
入院患者の生活の質の向上を ターミナルケアの問題が大きくなった背景の本質は、じつは終末期患者への真の「手厚さ」を欠く、医療や社会福祉制度の現実にあるということを、ここできっちりと抑えておくべきではないだろうか。
そういう意味では、日本の病院の看護・介護職員の定員配置は、国際水準に照らしてあまりにも少ない。
また療養環境、つまり病院での生活水準もプライバシーのなさ、トイレの少なさ、きたなさ等々、経済大国としては、あまりにもお粗末だ。
このことが、病院でのターミナルケアの問題を、いっそう増幅している。
病院の療養環境の改善、これはターミナルケアを契機にして、国民所得の配分の問題として早急に解決しなければならない。
在宅ターミナルケアのすすめ もうひとつの解決法は、やはり在宅でのターミナルケアを普及させるための条件の整備である。
先にも述べたように、病院というのは本来的な使命からして、現代医学の粋をつくしたさまざまな生命維持装置−救命手段を備えているし、いつでも迅速にそれらを使えるように訓練している。
だから急病者をかつぎこんでも安心だし、そういう場合に医師も看護婦も何の迷いもなく、心をひとつにして救命努力に邁進できる。
本来、病院の医師を中心とした医療チームとは、そういう目的のために、最大限に効率的に機能するように編成されている。
結果的にターミナルケアになっても、がん以外の病気や負傷の場合には、この機能をフルに発揮することが、まさに求められている。
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